From:西田貴大
先日、サマーセールで60%オフになっていた『シェンムーⅢ』というゲームを、ついつい買ってしまいました。
忙しくてやる時間なんて全然ないのですが……マーケッターでありながら、こういうセール(限定性)にはついつい引っかかって買っちゃうんですよね(笑)。
実は、この「シェンムー」というゲームの開発経緯には、ビジネスでめちゃくちゃ役立つ「強力なマーケティング心理」が隠されています。
なぜファンは20年も待ち、7億円もの資金が集まったのか?

(※ここから少しだけ僕の思い出話にお付き合いください)
約20年前、総製作費70億円という当時の常識を覆す規模で作られたこのゲーム。現代のオープンワールドゲームの概念を作った歴史的な名作なのですが……第2作目である『シェンムーⅡ』のエンディングが、とにかく衝撃的だったんです。
物語がいよいよ核心に迫り、タイトルの由来でもある重要なヒロインがようやく登場し(すごくない?ヒロインなのに2のラストでやっと出てくるんだよ)、謎を解くキーアイテムが見つかった……その大興奮の瞬間に!
画面が急に切り替わり、唐突にエンディングが流れ始めました。 「えっ!?どういうこと?? なんか押したらダメなボタン押した?」と、当時小学生だった僕はめちゃくちゃ焦りました。
そして悲劇なことに、そこから大人の事情で続編の制作がストップしてしまったのです。物語は、完全に「尻切れトンボ」の状態で終わってしまいました。
それから10年以上、ファンは物語の続きを知る機会を奪われたまま時は過ぎました。 しかし2015年、ついにプロデューサーが「続編開発のための資金をクラウドファンディングで集める」と発表したのです。
すると、どうなったか? 開始からわずか1時間44分で100万ドル(約1億円)に達し、「最も短時間で100万ドルを集めたビデオゲーム」としてギネス記録に認定。最終的な出資総額はなんと717万ドル(約7億円以上)にもなりました。
(※ちなみに、それだけの資金を集めて制作してもひどい出来だったうえに、まだストーリーも完結していません…笑)
なぜ、ファンたちは20年もの間、熱狂を冷ますことなく待ち続け、これほどの資金が集まったのでしょうか?
マーケティングで超強力な心理「ツァイガルニク効果」とは

ここに、今回お伝えしたい『ツァイガルニク効果』という心理学が働いています。
ツァイガルニク効果とは、「人は達成できた事柄よりも、達成できなかった事柄や、中断している事柄のほうを強く記憶に残す」という心理のこと。
要するに、中途半端なところで終わると、続きが気になって気になって仕方がなくなるという人間の脳のバグです。
シェンムーのファンたちは、最高の盛り上がりで物語を「中断」されたため、20年経っても脳のどこかに引っかかったまま、続きを強烈に渇望し続けていたのです。
スモールビジネスでの正しい「ツァイガルニク効果」の使い方

では、この強力な心理をスモールビジネスのマーケティングでどう活用すればいいのか?
よくある間違いが、テレビ番組の「このあと、衝撃の事態が!」のように、ただ情報を隠して焦らすだけの三流の煽りテクニックを使ってしまうことです。これをお客さんにやると、ただイライラさせてブランドの信用を落とすだけです。
正しい使い方は、「相手に圧倒的な価値(強烈な好奇心)を感じさせた上で、一番重要な『解決策(How)』の部分だけをあえて寸止めする」という構造を作ることです。
正しい寸止めにするための絶対ルール それは、寸止めする手前までに「ここまで無料で教えてくれるの!?」とお客さんが感動するレベルで、圧倒的な価値(ノウハウや事例)を出し惜しみなく提供することです。
中身のない薄っぺらい情報しか出していないのに「続きは有料で!」と隠すから、ただのウザい煽り(スパム)になるのです。 「Why(なぜそれが必要か)」と「What(具体的に何をすべきか)」を120%の熱量で与え尽くし、最後の最後の「How(それを自社に当てはめる具体的な手順)」だけを寸止めしてバックエンドに繋ぐ。これが、お客さんに感謝されながら売上をあげる正しい構造です。
分かりやすく「悪い例」と「良い例」を比較してみましょう。
- ❌ 悪い例(ただのウザい煽り): 「売上をあげる秘密の方法があります! 知りたければメルマガに登録してください!」 (※中身が何もないのに隠すだけ。読者は「どうせ大したことない」と離脱する)
- ⭕️ 良い例(正しいツァイガルニク効果): 「売上をあげるには『客数×単価×リピート率』の構造を理解することが不可欠です(WhyとWhatの価値提供)。では、具体的にどうやって今のビジネスの単価を2倍に引き上げるのか? その具体的な3つの手順(How)をメルマガで解説します」
このように、まずは相手を「なるほど!」と唸らせるのが先です。 これをWebライティング(ブログ記事など)に当てはめるなら、記事のタイトルや最初の導入文で「この記事を読むとこんな凄い事実がわかる」と強烈な期待を持たせつつ、核心の答えは記事の後半に配置する。これもツァイガルニク効果を使った立派なテクニックです。
いくつか具体的な活用例をご紹介します。
1. メルマガやブログの「次回予告」で使う
情報を一度にすべて出さず、あえて分割します。 「売上をあげるための3つのステップ。今日は2つ目まで解説しました。しかし、実は一番効果が高いのは明日のメールでお伝えする『3つ目のステップ』なのです。明日の〇時に配信するので必ずチェックしてくださいね」 このように中断することで、翌日のメールの開封率が劇的に跳ね上がります。
2. LP(ランディングページ)の登録導線で使う
商品の素晴らしい「結果(Before/After)」はすべて見せますが、「なぜそうなるのか?」という仕組みの部分だけを隠します。 「なぜ、当院の施術を受けると、たった1回で長年の痛みが消えるのか? その秘密は〇〇という特殊な手技にあります。その具体的な方法は、こちらの無料動画で解説しています(アドレス登録)」 核心部分を知ることを、お客さんの「行動(登録)」の理由にするのです。
3. 実店舗の集客イベントで使う
行き先をあえて隠し、「どこに行くんだろう?」という好奇心を煽って集客する観光バスの「ミステリーツアー」もこの心理を使っています。 飲食店であれば、「毎月29日限定のシークレット裏メニュー(来店した人にしか教えません)」といった見せ方にすることで、お客さんの「知りたい(完了させたい)」という欲求を刺激して来店を促すことができます。
【おまけ】経営者の生産性を奪う「ツァイガルニク効果の罠」
少しだけマーケティングから離れますが、この心理は、僕たち経営者自身の「仕事の生産性」を落とす厄介な罠にもなります。
「あのメールの返信、まだやってないな」
「来月の企画書、途中で止まってるな」
このように「未完了のタスク」を頭の中に置いたままにしていると、ツァイガルニク効果が発動し、脳のメモリ(集中力)を無意識のうちに奪われ続けてしまいます。
これを防ぐ一番簡単な方法は、「未完了のタスクをすべて紙に書き出して、脳から追い出すこと」です。紙に書き出して可視化するだけで、脳は「一旦完了した(安全に保存した)」と錯覚し、目の前の仕事に100%集中できるようになります。ぜひ試してみてください。
まとめ:心理テクニックは「魔法」ではなく「諸刃の剣」

ツァイガルニク効果は、うまく使えばお客さんの脳にあなたのビジネスを強烈に焼き付け、次の行動へと強制的に突き動かす強力なトリガーになります。
しかし、最後にマーケティングの専門家として、厳しい事実を一つだけお伝えしておきます。 心理テクニックは、ビジネスの根本的な「構造」をすっ飛ばして売上をあげる魔法ではありません。
もし、あなたの商品やサービスの質が低かったり、お客さんの悩みを根本から解決できる構造になっていない場合。 そこでツァイガルニク効果を使って、お客さんの期待値を極限まで高めて集客してしまうと……隠されていた中身(商品)を知った瞬間、お客さんは「なんだ、大したことないじゃないか」と強烈に失望し、二度と戻ってこなくなります。
質の低いビジネスにおいて心理テクニックを使うことは、ただの「クレーム製造機」になる諸刃の剣なのです。
だからこそ、まずは圧倒的な価値を提供できる「商品とビジネスの構造」を作ることが大前提です。その上で、今日からあなたのブログやLP、チラシを見直してみてください。
「最初から情報を100%出しすぎて、お客さんが『もうお腹いっぱい』と満足して離脱していないか?」 「『どうしてもこの続き(解決策)を知りたい!』と思わせる寸止めができているか?」
ぜひ、あなたの情報発信やセールスの導線に、この「あえて未完成にして寸止めする」という構造を取り入れてみてくださいね。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
西田貴大
P.S. 本文でお伝えした通り、心理学(ツァイガルニク効果など)は人間の脳を動かす強力な武器になります。
しかし、どんなに強力な心理テクニックを使っても、そもそもビジネスの「構造(どこから集客し、何を売り、どうやって利益を残すか)」の土台が間違っていれば、ザルで水をすくうように売上は逃げていってしまいます。
現在、あなたのビジネスの成長を止めている見えない欠陥(ボトルネック)を論理的にあぶり出す『マーケティング・ボトルネック診断』を無料で公開しています。
小手先のテクニックに頼る前に、まずは根本的なビジネスの構造を見直してみませんか?
> 『マーケティング・ボトルネック診断』を受けてみる
https://madmarketing.jp/lp/diagnosis
P.P.S. ちなみに、ツァイガルニク効果は別名「クリフハンガー効果」とも呼ばれます。
その理由は、昔の海外ドラマで、主人公が崖(クリフ)から転落しそうになる絶体絶命のピンチで番組が終わり、来週まで視聴者を焦らしたことが語源です。 (でも翌週になると、そのピンチがそもそもなかったことになってて普通に始まってたそうなんですよね……笑)


コメント