From:西田貴大
毎年、この時期になると必ず流れる恒例のニュースがあります。
それが、新春の初セリで「マグロが〇億円で競り落とされた」というニュースです。
最高額で競り落とすのは、ほぼ高確率であの有名な「すしざんまい」の社長。ちなみに、過去には最高で3億3,360万円の値がついたこともありました。
なぜ、すしざんまいは、一見すると無駄に思えるほど高額な金額を支払ってマグロを競り落とすのでしょうか? 新年のお祝いだから?
もちろんそれもあるでしょう。しかし、本質はそこではありません。
これは極めて高度な「マーケティング戦略」です。
たとえマグロ一匹に3億円を支払おうとも、その瞬間に日本中のテレビ、ラジオ、新聞、さらにはネットニュースが一斉に「すしざんまい」の名前を報道します。普通にそれだけの全国メディアに広告を打とうと思えば、3億円どころか数十億円の費用がかかります。
つまり、一般的な広告を出すよりも遥かに安上がりで、費用対効果が高いからこそ、あの社長は毎年競り場に立っているのです。 (とはいえ、かつて社長自身も「今回はちょっとやり過ぎた」と苦笑いしていたので、時には予算オーバーもあるようですが笑)
話題を作ってニュースになるマーケティング戦術
これと全く同じ構造のマーケティングを仕掛けていたのが、ZOZOTOWNの元社長である前澤氏です。
彼がTwitterで仕掛けた「総額1億円のお年玉(100名に100万円を現金プレゼント)」という企画を覚えている方も多いでしょう。条件は「アカウントのフォロー」と「指定ツイートのリツイート」。
この企画は、新春セールの情報とともに凄まじい勢いで拡散され、連日ニュースで取り上げられました。総額1億円という数字のインパクトに目を奪われがちですが、全国的な知名度獲得と、膨大な見込み顧客リスト(フォロワー)を同時に手に入れたことを考えれば、普通にテレビCMを垂れ流すよりも圧倒的に費用対効果の高いプロモーションだったのです。
この2人の天才的な動きから、私たちが学ぶべき最大の教訓はこれです。 「ニュースは待つものではない。自ら作るものだ」
第1章:マスコミに取材されるのは、決して難しくない

このようにマスメディアに取り上げてもらうことで、広告費を大きく抑えながら爆発的な認知を獲得する手法を「PR(パブリシティ)」と呼びます。
「そんなの、大企業や有名な社長だからできることでしょ? うちのような小さな会社や店舗には関係ないよ」
そう思ったなら、それは大きな勘違いです。実は、マスメディアに取材してもらうことは、あなたが思っているほど難しくありません。
「良いものを作っていれば、いつか取材が来る」という幻想
世の中の多くの経営者は、「真面目に良い商品を提供して、巷で話題の人気店になれば、そのうちテレビや雑誌が勝手に取材に来てくれる」と信じています。しかし、あえて厳しい現実をお伝えします。
「そんなわけ、絶対にありません」
メディア側から勝手に見つけてもらえるのは、ごくごく一握りの幸運な事例だけです。今、テレビや雑誌、WEBメディアで華やかに取材されているお店や企業の9割以上は、彼ら自身の側からメディアへ戦略的にアプローチを仕掛けています。
第2章:「プレスリリース」という、メディアへの果たし状

では、具体的にどうやってアプローチを仕掛けるのか? その具体的な武器となるのが『プレスリリース』という手法です。
プレスリリースとは、自社の新しい商品やサービス、イベントなどの情報を「ニュース素材」としてA4用紙1〜2枚程度にまとめ、テレビ局や新聞社、雑誌の編集部などの各メディアに郵送やFAXで提供する公式文書のことです。
「いきなりテレビ局に送るなんてハードルが高い…」と思うかもしれませんが、全国ネットの番組を狙う必要はありません。実は、地方のテレビ局(ローカル番組)や地方紙の記者たちほど、毎日の放送枠や紙面を埋めるために、地元の面白いネタを常に血眼になって探しているのです。そこに、彼らが思わず「これは面白い! 取材したい!」と飛びつくようなニュースをこちらから届けてあげるわけです。
例えば、飲食店なら単に「新メニューを始めました」では1秒でゴミ箱行きですが、「激辛マニアが悲鳴をあげる、地元産唐辛子を通常の50倍使った超激辛うどん」といった尖ったコンセプトや話題性があれば、地方のメディアは喜んで取材にやってきます。
さらに強力なのが「社会的な大義名分」
さらに最近のマスコミがこぞって飛びつくのが、「社会的な大義名分(社会的意義)」です。 例えば、「規格外で捨てられるはずだった地元の〇〇野菜を農家から直接買い取り、地域のフードロスをなくすために開発した新作スイーツ」のように、メディア側が『社会のために、この取り組みを報道しなければ!』と感じるようなストーリーがあれば、取材確率は劇的に跳ね上がります。
そして、一度どこかのメディアに取り上げられると、それを見た別のメディアから次々と取材依頼が舞い込む「オセロがひっくり返るような連鎖」が起こるのです。
第3章:プレスリリースを成功させる「2つの絶対条件」

ただし、ここで注意してほしいことがあります。プレスリリースは、ただ綺麗な文章を書いて郵送すれば終わり、というほど甘い世界ではありません。タダで宣伝してもらおうという「クレクレ根性」の経営者が送るリリースは、1秒でゴミ箱に捨てられます。成功させるには、以下の2つの条件を必ずクリアしなければなりません。
条件①:メディアの「担当者」に対するマーケティングを行う
テレビ局や編集部の担当者のもとには、毎日山のような数のプレスリリースが届きます。その中で、そもそも開封して読んでもらえる確率は極めて低いのが現実です。
だからこそ、「相手をファンにするためのマーケティング」が必要になります。最低限、自分がアプローチしたいメディア(番組や雑誌)を徹底的に研究しておくのは当たり前です。その雑誌を一度も読んだことがないのに、「うちを取材してください」などと連絡するのは失礼極まりありません。
「いつも貴誌の〇〇という連載を拝読しています。今回の私たちの新取り組みは、まさに貴誌がターゲットとしている読者層に深く刺さる内容だと思い、ご連絡しました」
このように相手の媒体を理解し、担当者と丁寧な関係性を築いた上でセールスを行う必要があります。また、イベントを開催する際なども、1回送って終わりにするのではなく、「開催の予告」「チケットが短期間で完売したという実績」というように、段階を分けて何度も話題を提供し、ニュースとしての価値を刷り込んでいく行動が不可欠です。
条件②:主導権はあくまでマスコミ側にあると知る
もう1つの重要な注意点は、「プレスリリースは、あなたが思った通りの内容で紹介されるわけではない」ということです。
お金を払って出す「広告」であれば、文言やデザインを100%コントロールできます。しかし、プレスリリースによる「取材」の編集権は、100%メディア側にあります。こちらが「職人のこだわり」をアピールしてほしかったのに、テレビ側が「一風変わったユニークな名物社長」という切り口で編集してしまうことなど日常茶飯事です。
最悪の場合、意図しない取り上げられ方をされてブランドイメージを傷つけるリスクもあります。プレスリリースは、自社の軸となるコンセプトやUSP(独自の強み)が強固に固まっていて、どんな切り口で切り取られてもブレないビジネスの土台がある経営者だけが扱うべき、強力な諸刃の剣なのです。
まとめ:ニュース価値を設計できる経営者だけが生き残る

プレスリリースは、莫大な広告費に頼ることなく、メディアの信頼性を借りて自社の認知度を爆発的に高められる極めて有効な施策です。
しかし、繰り返しますが、これは「無料で楽に集客できる裏技」ではありません。メディアに「これは社会的に伝える価値があるニュースだ」と認められるだけの、強烈なコンセプトや独自の強み(USP)を、経営者自身が日頃からどれだけ真剣に設計しているかがすべてです。
自社の中に、世の中を驚かせるような「ニュースの種」が眠っていないか、ぜひ一度時間をとって棚卸ししてみてください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
西田貴大
P.S. 「うちの商品やサービスを、どうやってメディアが飛びつく『ニュース』に変換すればいいのか分からない…」 「ただの安売りや、一発屋のデカ盛りではなく、本質的な自社の強みで取材されたい」
もしあなたがそう悩んでいるのなら、それはあなた自身の「ニュース設計(コンセプトやUSP)」がまだ弱く、ライバルの中に埋もれてしまっている証拠です。
ちなみに、しかるべき大金を払えば、普通にテレビで番組枠を買って取り上げてもらうこともできます。世の中には「ギネス世界記録」や「モンドセレクション」のように、一定の費用を支払って手っ取り早く自社に箔をつける(権威性を買う)マーケティング手法も存在しますし、それも立派な戦略の1つです。 (※これらのお金を使って実績を作る具体的な方法については、以下の記事で詳しく解説しています)

上記のように「お金で権威性を買う」のも1つの正解です。 しかし、もしあなたが「莫大な広告費をかけず、自社の本当の価値をメディアに認めさせて、純粋な『取材』として世の中に爆発的に拡散させたい」と思うのであれば。まずは自社のビジネスのどこに「見えない足枷」や「伝わらない原因」があるのかを、客観的に突き止める必要があります。
一人で悩んで時間を無駄にする前に、まずは外部のプロの目を使った「客観的な診断」を受けてみてください。あなたのビジネスをメディアが放っておかない「目的店」へと変えるための、具体的な次の一手が見えてくるはずです。
> 『マーケティング・ボトルネック診断』を受けてみる
https://madmarketing.jp/lp/diagnosis
P.P.S. ちなみに、僕のメディア掲載実績である「某有名マーケティング専門誌」への掲載は、こちらから必死に売り込んだわけではありません。僕がした「ちょっとしたおせっかい」が、あれよあれよと事態が良い方向に転がり、僕の書いた文章がそのまま掲載されることになったんです。
しかもその際、事前に「載せていいですか?」という丁寧な連絡はなく、なんと許可なく勝手に掲載されました(笑)。今では逆に、僕が相手側に許可を取って「メディア掲載実績」として公式に使わせてもらっているという、なんとも奇妙な裏話です。
(実は、掲載時の文言は一言一句ガチガチに縛られていて、僕の側で勝手に文言を変更することは許されないという、大人の事情もあったりします(笑))


コメント