From:西田貴大
先日、ブラックフライデーのセールの時期に、前から欲しかった「レーシングシミュレーター(自宅で本格的なレース体験ができる高額な機材)」が割引になっていました。
「これは買いだ!」と一瞬テンションがあがったのですが……結局、僕はカートに入れるのをやめました。
なぜ、欲しかったのに買わなかったのか? それは、僕がマーケティングをやってきて、人間の行動心理の「ある残酷な構造」を嫌というほど知っていたからです。
今日は、僕がシミュレーターを買わなかった理由を通して、あなたのビジネスで「商品が良いのに、なぜかお客さんが買ってくれない」という現象が起きる本当の理由と、お客さんを強制的に動かす『限定性と希少性』の構造についてお話しします。
筋トレマニアが、自宅のトレーニング器具を捨てる理由

僕がレーシングシミュレーターを買わなかった最大の理由は、「いつでもできる環境になると、人間は結局やらなくなる」という構造を知っているからです。
これ、実はよくある話なんです。 僕は趣味でパワーリフティング(筋トレ)をしているのですが、以前、ジムに行く時間がもったいなくて、「家にバーベルなどの器具を買って、ホームジムを作ろうかな」と悩んだことがありました。
そこで、週8回(!)はジムにいるという筋トレの鬼のようなおじさんに相談してみたところ、こんな答えが返ってきました。
「絶対やめとけ! あんなもん、わざわざジムに来るからやる気が出るんや。家にあったら絶対やらへんぞ! 俺も昔ホームジムを作ったけど、最初は面白がってやってたけど、最後は『なんやこれ、ただの邪魔な鉄の塊やな』ってなって全部捨てたわ!」
週8回もトレーニングするような人でさえ、「いつでもできる環境」になるとやらなくなるのです。 人間は怠惰な生き物です。「いつでもできること」は、「今日やらなくてもいいこと」に変換され、結果的に「永遠にやらないこと」になります。行動を起こすためには、外的な「きっかけ」や「強制力」が絶対に不可欠なのです。
※追記 : 実際、数年後レーシングシミュレーターを買いましたが、VRにするのが面倒で月に1回くらいしか使ってません…(あと、酔うんですよね)
「いつでも買える」は「今買わない」と同義である

この人間の心理構造を、そのままマーケティング(あなたのビジネス)に当てはめてみましょう。
「いつでも買える商品」というのは、お客さんにとって「いつでもできる筋トレ」と全く同じです。 どんなに素晴らしい商品でも、それが「いつでも買えますよ」という状態で置かれている限り、お客さんはこう考えます。
「なるほど、すごく良い商品だね。でも、今すぐ必要なわけじゃないから、また今度お金に余裕ができたときに買おう」
そして、その「また今度」は、一生やってきません。 あなたのビジネスの売上があがらないのは、商品の魅力が伝わっていないからではなく、お客さんに「今すぐ買わなければならない理由(きっかけ)」を提示していないからです。
手に入らないものほど欲しくなる「希少性の原理」

では、どうすればお客さんは「今すぐ」行動してくれるのでしょうか? その唯一の答えが、『限定性(希少性)』を持たせることです。
行動経済学の世界には「希少性の原理」という言葉があります。 人は、数が少ないもの、つまり「なかなか手に入らないもの」ほど価値が高いと判断し、強烈に欲しくなる生き物です。
例えば、新しい元号(令和)が発表された日、街頭で配られた号外の新聞に人々が殺到し、怒号が飛び交い、さらにはただの無料の紙切れがネットで1万円で転売されるという異常事態が起きました。 これは、「歴史的な瞬間の号外(数が少ない)」という希少性が、人々の購買心理を狂わせた典型的な例です。
また、僕があるマーケティングセミナーで聞いた話ですが、ある地方に「いつも満員で、お昼時にやってくるお客さんをバンバン断っている人気店」があるそうです。 店内を見渡すと、テーブルの配置を変えればまだまだお客さんを入れられるのに、店主はなぜか席を増やさず、お客さんを断り続けています。
そのセミナーの講師は「理由はわからない」と言っていましたが、僕が思うにこれは「わざと」やっている可能性が高いです。 人間は「満員です」と断られれば断られるほど、「くそ〜!次こそは意地でも食べてやる!」と執着します。(一見さんお断り、などのVIP戦略も同じですね)
そして何より重要なマーケティングの仕掛けが、「優遇されたお客さんの優越感」です。 なんとかお店に入ってご飯を食べられた人は、目の前で他のお客さんがガンガン断られている姿を見ることで、強烈な優越感を感じます。結果として、「自分は選ばれた人間だ」という顧客満足度があがり、さらにそのお店の熱狂的なファン(リピーター)になっていくのです。 そして、外には入れなかった人たちの行列ができ、「行列が行列を呼ぶ」という最強の好循環が生まれます。
■ 伝説のマーケターも語る「希少性」の魔力
アメリカでサングラスを2000万本も売った伝説的なマーケター、ジョー・シュガーマンも、著書の中でこの希少性の強力な効果についてこう述べています。
「自分以外にはわずかな人しか持っていないものを所有するというのは、人間の強い動機付けの1つになる。収集品や限定版、短期生産、超高級品などは少数の人しか所有できないため、どれもお客さんに買いたいと思わせる強い動機付けとなる」
(ジョセフ・シュガーマン著 『シュガーマンのマーケティング30の法則』より引用)
フェラーリやポルシェのような高級車が、あえて数量限定で生産して何千万円という価格をつけるのも、まさにこの心理(持っている人が少ないという優越感)を突いているからです。
人を強制的に動かす「限定性」の3つの作り方

いつでも買える安心感を壊し、「今買わないと、もう手に入らないかもしれない」という焦り(きっかけ)を与えるためには、以下の3つのアプローチで「限定性」を作ります。
(※もちろん大前提として、[たった1人のペルソナ]の強烈な痛みに刺さる、[本当のベネフィット]が提示できていることが条件です。この2つの土台がグラグラなまま限定性だけを煽っても、ただの怪しい業者になってしまいます。必ず土台を固めたうえで、以下のアプローチを重ねてください)
- 期間の限定: 「〇月〇日までの3日間限定販売」
- 数量の限定: 「毎月先着5名様のみ受付」「お一人様3個まで」
- 条件の限定: 「メルマガ読者限定」「本気で現状を変える覚悟のある方のみ」
どんなビジネスでも、考え方次第で必ず限定性は作れます。 物理的な商品を売っていなくても、「僕が直接サポートできるのは月に3社までです(数量)」と言ったり、「まずは無料診断を受けて、審査を通過した方限定です(条件)」とお客さん側にハードルを設けたりすれば、それが強烈な限定性として機能します。いなくても、「僕が直接サポートできるのは月に3社までです」と言えば、それが強力な限定性になります。
【警告】絶対にやってはいけない「嘘の理由」

ただし、この限定販売をビジネスに取り入れるうえで、絶対に守らなければならない「1つの注意点」があります。
それは、『なぜ限定なのか? という、信じられる理由を必ず説明する』ということです。
例えば、デジタルデータであるPDFのレポートを販売する際に「先着10名様限定!残りあと3冊!」と煽ったとします。 お客さんはどう思うでしょうか? 「いや、デジタルデータなんだから無限にコピーできるやろ! ただの嘘やん!」と、一瞬であなたへの信頼をなくします。
しかし、これが紙媒体の分厚いレポートで「今回は特別に自費出版で100冊だけ印刷しました。増刷の予定はないので、残りあと10冊です」と言われれば、そこには「物理的に数がない」という信じられる理由があり、強烈な希少性を感じます。
理由なき限定性は、ただの「胡散臭い煽り」です。必ず、お客さんが納得する真っ当な理由を添えてください。
まとめ:あなたのビジネスに「締め切り」はあるか?
いかがだったでしょうか。
- 人間は「いつでもできること(買えるもの)」は一生後回しにする。
- 行動を強制し、売上をあげるためには「限定性・希少性」が絶対条件。
- 限定にする場合は、必ず「信じられる理由」を添えること。
もしあなたが今、「商品は良いはずなのに、なかなか売上に繋がらない」と悩んでいるなら、お客さんに「また今度でいいや」という逃げ道を与えていないか見直してみてください。
嘘をついて無理やり煽る必要はありません。しかし、ビジネスとして真剣にお客さんを救いたいのであれば、正しい「限定性と希少性」を設計して、彼らが一歩を踏み出すための「きっかけ」を作ってあげてください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
西田貴大
P.S. 本文でお伝えした通り、売上をあげるためには商品やサービスの魅力だけでなく、お客さんが「今すぐ」行動するための『限定性(オファーの強さ)』を構造として組み込むことが絶対条件です。
しかし、いざ自社の商品となると「いつでも買える状態にしておいた方が、取りこぼしがなくて安心だ」と、無意識のうちにお客さんに逃げ道(後回しにする理由)を与えてしまっている経営者が非常に多いのも事実です。 それは、あなたがビジネスの当事者(売り手)であり、客観的な顧客の「買わない(後回しにする)心理」を見落としてしまっているからです。
あなたのビジネスには、お客さんが「今すぐ買わなければ!」と行動を余儀なくされるだけの、強力な理由(オファーの構造)が設計されていますか?
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