From:西田貴大
今日は、起業やビジネスの本質を学ぶうえで、僕が大好きな本を1冊ご紹介します。 スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授が書いた『20歳のときに知っておきたかったこと』です。
彼女はスタンフォード大学のSTVP(スタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム)というところで、起業家を育成する講座を担当しているのですが……その講義の内容が、非常に独特で面白いのです。
たとえば、「5ドル(約500円)を元手にして、2時間でどれだけお金を増やせるか?」という課題や、「クリップの入った封筒を渡され、4時間のあいだにそのクリップを使って、できるだけ多くの『価値』を生み出してください」といった、起業家精神を養う常識破りのワークがたくさん行われます。
(※ちなみに「5ドル」のワークで最も多くのお金を稼いだトップクラスのチームは、『5ドルの元手に一切手をつけることなく』利益を生み出しました。最初から「お金を増やすためにお金を使う」という前提(常識)を捨てていたのです)
この本には、アイデアの出し方や常識の破りかたなど、起業家のマインドについて数多くの事例が書かれているのですが……その中でも、僕が特に大笑いし、かつ「マーケティングの本質」を突いていると感じた【常識破りのアイデア】があるのでシェアしようと思います。
以下、本書からの引用です(※読みやすいように文章を少し編集しています)。
追い込まれた男が発見した、ビジネススクールに入学するための常識外れの方法

昔からの親友のジョン・スティゲルボートが大学院に願書を提出する際、良いとされるアイデアの逆を行く作戦をとりました。ふつうなら最悪だと思うようなことをして、教授に印象づけたのです。
ジョンがビジネススクールに行こうと思いたったのは、ほとんどの大学院が願書の受付を締め切った後でした。後がないジョンは、常識破りの方法で願書を目立たせようと考えました。志願者はふつう素晴らしい業績を書き連ねるものですが、ジョンは、親友であり刑務所で同房だったと称する「元教授」からの推薦状をつけたのです。
推薦状に書かれた人物評は、およそ審査委員がこれまでお目にかかったことがない、常識的に見ればひどい内容のものでした。
ジョンが大学院に提出した「ふざけた推薦状」
『わたしとジョン・スティゲルボートの出会いは、グレイハウンド・バスでした。彼は酔いつぶれてバスの後部の床で寝ていたようです。周りには発泡スチロールのカップやキャンディの包み紙が散らかり、タバコの吸殻が山盛り。手には空の酒瓶を握っていました。
わたしは彼の親友です。セブンイレブンに盗みに入って捕まった後、同じ刑務所に入ったので囚人仲間でもあります。救世軍で心のこもった食事をした後、連れ立って伝道集会に行ったことがあります。そこで、おなじ女の子に目をつけました(スティゲルボートは敗北と屈辱を快く受け入れました。負け慣れているのです)。
若き起業家を支援するジュニア・アーチブメント・カンパニーや、家族経営のクリーニング屋がお困りでしたら、彼のすばらしい資質がお役に立てると思います。あくびをするときにはきばんだ歯を隠し、屁をこくときには窓を開けます。指笛で大きな音を立て、ゲップで瓶のフタを開けることもできます。シャワーは月に一度。使えるときは石鹸を使います。
バス亭のトイレで寝なくて済むように、彼には居場所が必要です。大酒飲みで、変わった性癖を持っていても、初日からクビにされない大企業で職を見つける必要があります。変わった性癖を持つ人間は、独創的で何ものにも囚われない発想をするものです。
彼の考えはまったく独創的なもので、じつは何も考えていないのかもしれません。この男は酒のためとあれば、何でもします。働くことだってするかもしれません。刑務所を出たいま、どこかの大学院が面倒を見てくれたとしても、保護観察司は気にはしないと思います。
彼はアウトローのオートバイクラブ、「ヘルズ・エンジェルズ」のリーダーで、わたしが話した連中は皆、ホワイトカラー犯罪に手を染めると言っています。バスのうしろの床に寝転がっていた連中のなかでは、この男が最高です。全体的な印象としては、わたしがもっともらしく言うほど良くはありません。
わたしを刑務所から出してください。そうすれば、彼の代わりにシカゴに行けますから。
ワシントン州ワラワラ、ワラワラ連邦刑務所 囚人番号335342号 ブフォード・T・モートン』
審査委員は、この男にぜひ会ってみたいと興味津々に
これを読んだ審査委員は、ジョンを候補から外すどころか、ぜひ会ってみたいと面接に呼んだのです。ジョンが面接に現れると、奇妙な願書を出してきた男を一目見ようと、誰もが自室のドアを開けて覗きました。
意外にもジョンは礼儀正しく、落ち着いていました。 そして、なんと入学を許可されたのです。
(以上、引用終わり)
なぜ、この「ふざけた願書」で合格できたのか?

いかがでしたでしょうか? 常識外れで、思わず笑ってしまう面白い作戦ですよね。
しかし、これをただの「変な人の成功例」として笑って終わらせてはいけません。ここには、僕たちスモールビジネスが生き残るための「強者のルールの破壊(マーケティングの本質)」が隠されているからです。
なぜ、ジョンはこの願書で最難関のビジネススクールに合格できたのでしょうか?
理由は明確です。 審査委員たちは、毎日毎日「私はこんなに優秀です」「こんな素晴らしい業績があります」という、似たような自慢話(退屈な願書)を何千枚も見せられてウンザリしていたからです。
みんなが「同じ正攻法(常識)」でアピールしている中で、ジョンはあえて真逆の「刑務所上がりでゲップができる大酒飲み」という最悪のキャラクターを提示しました。 その結果、審査委員の「退屈な日常」が強烈に破壊され、「なんだこいつは!?どうしても会ってみたい!」という『圧倒的な好奇心(Attention)』を引き出すことに成功したのです。
さらに秀逸なのは、面接の場に現れたジョンが「意外にも礼儀正しく落ち着いていた」という点です。ここで最高のギャップ(期待値のコントロール)が生まれ、審査員は完全に彼の魅力に取り込まれてしまいました。
スモールビジネスは「正攻法」を捨てろ

もしジョンが、他の受験生と同じように「素晴らしい業績」を書いて真っ当に勝負していたら、締め切り後という圧倒的に不利な状況を覆すことは100%不可能だったでしょう。
ビジネスもこれと同じです。 資金もブランド力もないスモールビジネスが、大企業と同じような「キレイで無難な広告(正攻法)」を打っても、お客さんの目には一切留まりません。その他大勢の退屈な広告に埋もれて、資金が尽きるだけです。
「予算が少ないから勝てない」
「他社と差別化できるような特別な商品じゃないから売れない」
多くの経営者がそう嘆きますが、それはただの言い訳に過ぎません。ジョンに「素晴らしい業績(武器)」がなかったように、与えられた枠(常識)の中で考えているうちは、ビジネスの状況は何も変わらないのです。
発想の制限(常識)を取り払えば、ビジネスをするのに大金なんて必要ありません。 「その他大勢と同じことをやっていないか?」 「お客さんの退屈な日常を破壊するような、強烈なアプローチ(見せ方)はできないか?」 と、常にゼロベースで発想する起業家精神を持つことです。
ここで誤解してほしくないのは、「ただ、ふざければいい」というわけではない、ということです。
たとえば、ライバル全員が「安さ」をアピールしているなら、あえて「異常なほどの高価格と手厚い保証」を打ち出す。 つまり、『業界の当たり前の逆を行く』のが正解なのです。
自己啓発や成功哲学の巨匠であるアール・ナイチンゲールも、このような本質的な言葉を残しています。
「大衆の逆を行け。大衆は常に間違っている」
みんなと同じ「正解(正攻法)」に群がるのではなく、あえて誰もいない「逆」の道を行く。それが、資金のない弱者が、強者に勝つ唯一の方法なのです。
この『20歳のときに知っておきたかったこと』という本は、その常識の枠をぶっ壊すヒントがたくさん詰まっています。あなたがすでにビジネスをやっていたり、今後起業したいと思っているのであれば、絶対に早いうちに読んでおいた方が良いと断言できる一冊です。ぜひ読んでみてくださいね!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
西田貴大
【2020年12月 追記:奇跡の出来事】
なんと、先日Twitter(X)で、著者のティナ・シーリグ教授ご本人と偶然絡む機会がありました……!
彼女の本から学んだこと、読んで起きた自分自身の変化など、ずっと彼女に感じていた感謝の想いを、ご本人に直接、一気に伝えることができました。 発想の制限を取り払い、起業家精神を持って行動し続けていれば、こんな奇跡みたいなことも起こるんですね。なんか、ひとつ夢が叶ったような不思議で最高の感覚でした。
P.S. 今回のジョンの事例のように、「商品の見せ方(切り口)」を常識外れな角度に少し変えるだけで、お客さんの反応率が桁違いに跳ね上がることは、マーケティングの世界ではよく起こります。
「一生懸命に宣伝しているのに、誰からも見向きもされない…」
「ライバルと同じようなアプローチになってしまい、価格競争から抜け出せない…」
もしあなたがそう感じているなら、あなたの商品そのものが悪いのではなく、「見せ方(お客さんへのアプローチの構造)」がその他大勢と同じ『退屈なもの』になっている可能性が高いです。
現在、あなたのビジネスがなぜお客さんの興味を惹けないのか、その隠れた構造の欠陥を論理的にあぶり出す『マーケティング・ボトルネック診断』を無料で公開しています。
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