商品を変えずに「値上げ」する構造。中身が同じでも売上が3倍になるポジショニングの魔力

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From:西田貴大

「商品を値上げしたいけれど、中身を良くしないと怒られそう…」
「これ以上、商品に付加価値をつけるアイデアが浮かばない…」

多くの経営者が、売上をあげるために「商品そのもの(中身)」を必死に改良しようとします。しかし、マーケティングの構造を理解していれば、商品の中身を1ミリも変えることなく、価格も販売数も同時に引き上げることは十分に可能です。

今日は、僕自身が最近買ったプロテインの話を入り口に、スモールビジネスが今すぐ使える「ターゲットの絞り込み(ポジショニング)」による値上げのカラクリについてお話しします。

目次

「寝る前専用」というだけで売れる理由

つい先日、いつも飲んでいるプロテインとは別に、「夜、寝る前に飲む用途」に特化した『コンバット』というプロテインを買ってみました。 なんでも、8時間という長時間にわたってゆっくりとタンパク質を吸収してくれるので、栄養を摂取できない睡眠時にピッタリなのだそうです。

ここに、ビジネスの強力なヒントが隠されています。 ある商品を「〇〇専用」と用途を絞って専門化するだけで、お客さんは圧倒的にその商品を手に取りやすくなるのです。

もし目の前に「普通のプロテイン」と「寝る前専用プロテイン」の2つが並んでいて、あなたが寝る前の栄養補給を目的にしていたら、絶対に「専用」の方を買ってしまいますよね?

実は、この「専門化」のテクニックが最も使われているのが洗剤の業界です。 車用のカーシャンプー(ダークカラー用、メタリック用、ホワイト用など)や、食器用洗剤、お風呂用洗剤など、用途ごとにたくさんの種類が売られています。

しかし、もし嘘だと思うなら、今度スーパーでパッケージの裏の成分表を見てみてください。 一部の研磨剤などの違いを除けば、どれも基本的には同じ「中性洗剤」と書いてあるはずです。つまり、中身がほぼ同じでも「〇〇用」と表記されているだけで、私たちは「これを洗うときは、これを使わなくてはならない」と、ある意味で思い込まされているのです。

(※ただ、実際にいろんな用途に使い回すのはお勧めしません。各メーカーが用途に合わせて成分の「微調整」はしているはずですからね。しかし、汚れを落とす『ベースの中身』が同じであることに変わりはありません

中身が同じでも「3倍」売れるダン・ケネディの専門化戦術

実はこの「専門化(用途ごとにラベルを分ける)」という戦術は、トップマーケターたちが昔から使っている王道の手法です。

ダン・ケネディの書籍『天才詐欺師のマーケティング心理技術』の中で、非常に面白い事例が紹介されています。(※本の中ではジョン・R・ブリンクリーというニセ医者の戦略が丸々一冊解説されているのですが、ここで紹介するのはケネディ自身がやった戦術です。いや、ブリンクリーちゃうんかい!笑)

革製品の「クリーニング」「トリートメント」「つや出し」が1つでできる『オールインワンの革クリーナー』がありました。 ケネディは、中身がまったく同じこの商品を、「クリーナー用」「トリートメント用」「つや出し用」の3つのラベルに分けて、それぞれ別の商品としてパッケージ販売したのです。 結果はどうなったか?……なんと、売上が3倍に跳ね上がりました。

また、同じ手法を「除草剤」でも行っています。 庭の雑草に悩んでいる人に向けて、普通の除草剤に2種類のラベルを貼り、1本は「普通の除草剤」、もう1本は「雑草予防スプレー」としてセットで販売したところ、これも飛ぶように売れました。 (そりゃあ、除草剤で草を枯らした上に、予防スプレーとしてさらに除草剤を撒いていれば、雑草は生えてきませんよね 笑)

パイロットはなぜ「同じサプリ」を高く買うのか?

さて、ここまでの話(中身が同じなのにラベルを変えて複数買わせる手法)を聞いて、真面目なあなたはこう思ったかもしれません。 「こういう売り方は、なんだかお客さんをだましている感じがして、あまり好きではないな…」と。

正直に言うと、僕自身も最初はそう思っていました。 しかし、商品を専門化(〇〇専用)することの最大のメリットは、「強気の値上げ」ができること以上に、実はお客さんにとっての『究極の親切』になるという点なのです。

アメリカのマーケティングの事例で、こんな面白い話があります。 目に良いとされているブルーベリーの栄養素「アントシアニン」のサプリメントを、「パイロット専用」と表記し、通常の何倍も高い単価をつけて販売しました。

実はこれ、一般向けに安く売られているサプリメントと、中身の成分量はまったく同じでした。 にもかかわらず、この高額なサプリメントは、パイロットたちに飛ぶように売れたのです。

「中身が同じなのに高く売るなんて、倫理的にどうなの?」と思うかもしれません。しかし、これは決してお客さんを騙しているわけではありません。

パイロットにとって「目」は命の次に大事な商売道具です。彼らは「一般向けの安いサプリで本当に効果があるのだろうか?」と悩む時間や不安を嫌います。だからこそ、「あなたの職業に完璧に合わせた専用品ですよ」と言い切ってくれること自体に、高いお金(価値)を払っているのです。

ターゲットを絞ることは、お客さんの迷いを消し去る「究極の親切」なのです。

【具体例】サービス業で単価をあげる「複数の入り口(ラベル)」戦略

ここまで読んで、「それは形がある『モノ』だからできるんでしょ?それに、ターゲットを絞りすぎたらお客さんが来なくなって潰れるよ」と思ったかもしれません。

しかし、それは大きな勘違いです。知識や技術といった「無形サービス」でも、洗剤のメーカーと同じように「中身は同じまま、ラベル(入り口)を複数作る」ことで、市場を狭めずに客単価をあげることができます。

たとえば、街の「整体院」を想像してみてください。 「誰でも歓迎!全身揉みほぐし60分3,000円」という看板を一つだけ掲げれば、近所のマッサージチェーンとの過酷な価格競争になり、薄利多売の泥沼に陥ります。

しかし、まったく同じベッド、同じ施術者の技術(中身)を使って、ネット上の入り口(ホームページやチラシ)を悩みに合わせて複数用意したらどうでしょうか。

  • 「産後の骨盤のゆがみ・ひどい腰痛を改善する専門のページ
  • 「デスクワークによる慢性的な眼精疲労と肩こり専用のページ
  • 「ゴルフの飛距離を伸ばすための、体幹チューニング専用のページ

整体院の店舗自体は1つ(中身は同じ)でも構いません。 しかし、「産後の痛みに悩んでいるお母さん」や「ゴルフのスコアを伸ばしたいお父さん」がそれぞれの専用ページ(ラベル)を見たとき、それは何としてでも解決したい強烈な悩みに対する「自分専用の解決策」に見えます。 結果、1回1万円の高額な施術料金でも、「私にピッタリだ」と喜んでお金を払ってくれるようになるのです。

設備や技術(中身)は1ミリも変える必要はありませんし、市場を1つに絞り込んで自滅する必要もありません。 「誰の、どんな強烈な悩みを解決するための専用サービスか」というラベル(入り口)をいくつも並べておくこと。これが、価格競争と薄利多売から脱却する最も確実な構造なのです。

世の中の商品の裏側(OEMの真実)

「中身が同じでも、ラベル(ターゲット)が違えば別物として売れる」 この構造をもっと根本的に言えば、あなたが普段使っている化粧品、電化製品、食品なども、実は「同じ工場から、ラベルだけを変えて出てきた同じ商品」である可能性が非常に高いということです。

これをビジネス用語で「OEM(他社ブランド製品の製造)」と呼びます。 スーパーのプライベートブランドなどもこれですね。

以前、トレーニングジムで仲良くなった某有名冷凍食品会社の元営業マンに聞いた話ですが、その会社では、とある有名な冷凍食品の具の分量をほんの少しだけ変え、パッケージを変えて、様々な別会社に卸していたそうです。

特に化粧品などは、法律で入れていい成分や分量の上限が決まっているため、各社の中身には誤差程度の違いしかなく、ほぼ同じ工場からラベルだけを変えて出てきている可能性が高いと僕は思っています。(原価率が数パーセントの世界なので、女性にとっては少し怖い話かもしれませんが…)

まとめ:あなたの商品の「ラベル」を貼り替えろ

いかがだったでしょうか。

  1. 商品の中身を変えなくても、「〇〇専用」と用途を絞れば売れ行きは跳ね上がる。
  2. ターゲットを極限まで絞り込めば、迷いを消す「親切代」として堂々と値上げができる。
  3. 世の中の商品の多くは、中身は同じでラベル(見せ方)を変えているだけである。

もし今、あなたが「うちの商品は他社と差別化できない」「価格競争に巻き込まれている」と悩んでいるなら。 商品そのものをいじる前に、「今の商品のまま、ターゲットの切り口(ラベル)を変えられないか?」を考えてみてください。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

西田貴大


P.S. 本文で少しお話しした、各用途に特化して専門化された商品が世の中に出回りすぎると、次はどうなると思いますか?

「中身は結局同じだ」という事実に気づき始めた消費者を狙って、「これ一本でどんな用途でも大丈夫!オールインワン!」という商品が必ず出てきます。 専門化と統合(オールインワン)。ビジネスの歴史は、常にこのサイクルで一周回って元に戻るから面白いですよね(笑)。

P.P.S. 気になる寝る前専用プロテインの味ですが……(誰も気にしてないと思いますが笑)。

いつも飲んでいる別のプロテインがチョコレート味なので、今回はクッキー&クリーム味にしてみたのですが、これがあーーんまい、あまい! 「アメリカ人は舌がおかしいんじゃないの?」と思うほどの強烈な甘さに襲われました。規定より多めの水で薄めて飲むも、口直しにさらに水を飲まなきゃいけない異常事態です。

(※2019年追記) これを書いてから色々なプロテインを試してみましたが、結論……「アメリカ人は、舌がおかしいと感じるほどの甘党だった!」ということが発覚しました。一部のメーカーを除き、ほぼ全部のプロテインがえげつない甘さでした(笑)。

P.P.P.S. 「同じ商品でも、見せ方(ターゲット)を変えれば高く売れる」というのはマーケティングの不変の原理原則です。

しかし、「自分の商品のどの用途を切り出せばいいか分からない」「自社の強みが当たり前になりすぎていて、新しいターゲットが見えない」と手が止まってしまう経営者が非常に多いのも事実です。 それは、経営者自身が当事者としてビジネスの内部に浸かりすぎているため、客観的な「市場の視点」を失ってしまっているからです。

現在、あなたのビジネスがなぜ「価格競争から抜け出せない」状態になっているのか? その隠れた構造の欠陥を論理的にあぶり出す『マーケティング・ボトルネック診断』を無料で公開しています。

商品開発に無駄なお金と時間をかけてしまう前に、まずは自社の商品の「見せ方(ラベル)」が構造的にズレていないか、客観的にチェックしてみてください。

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