From:西田貴大
あの大塚家具が、ついに身売りをすることになりました。 以前、父と娘が経営権を巡って泥沼の裁判沙汰(お家騒動)を起こし、世間を騒がせたあの会社です。
報道によれば、販売不振による赤字が3期連続となり、自力での再建が困難になったとのこと。 実は僕、あの親子喧嘩が話題になっていた当時、「揉めている会社の株価は(注目されて)上がる」という不純な動機で、大塚家具の株を買おうとしたことがありました(笑)。
結局、株価を調べたらすでに高くなりすぎていて買うのはやめたのですが、その後、お家騒動の末に娘さんが社長に就任したとき、僕は直感的にこう思いました。
「あぁ、この会社はもう、うまくいかなくなるな」と。
(後で読むと「結果論だ」と思うでしょうが、騒動が起こっている当時のメルマガでもこの話題に触れてそう書いています)
マーケティングの専門家として、なぜそう断言できたのか? 今回は、大塚家具を破滅に導いた、多くの経営者が陥りがちな「致命的な価格戦略の法則」についてお話しします。
なぜ大塚家具は、社長が変わった途端に傾いたのか?

僕が「大塚家具は失敗する」と確信した理由。 それは、新社長が就任会見で、ニトリやIKEAといった低価格・大量販売の強大なライバルに対抗するため、これまでの「高価格路線」を捨てて「中価格帯」に進出するという方針を発表したからです。
結論から言います。 これまで「高価格・高品質」で勝負していたブランドが、安易に「中価格帯」へと路線変更すると、たいていの場合、ビジネスは崩壊します。
これは歴史が証明している、不変のマーケティング法則です。 分かりやすい事例を挙げましょう。
【事例】高級ブランド「ティファニー」の大衆化と崩壊

1990年代後半、高級ジュエリーブランドの代名詞だったティファニーは、より幅広い層にアピールしようと、商品の「大衆化」に踏み切りました。
数千円から買える「お手頃価格のシルバージュエリー」をラインナップに加え、手の届く贅沢を求める一般消費者の波に乗ろうとしたのです。
最初はうまくいっていたが……ブランドが死んだ
この戦略は、一時的には爆発的な売れ行きを記録し、ティファニーの売上は増加の一途をたどりました。 しかし、その代償はあまりにも大きかったのです。
静かで気品あふれていた店舗は、お手頃価格の商品を求める若者や大衆層で溢れかえり、かつての「特別な空間」としての価値は崩れ落ちました。その結果、長年ティファニーを愛用し、高額なダイヤモンドを買っていた富裕層の上顧客たちが、「もうここは、私が来る場所ではない」と去っていってしまったのです。
ティファニーは莫大な利益を上げましたが、結果として「最高級ブランド」という唯一無二の資産(構造)に、致命的なダメージを負いました。
絶望からの高級路線への回帰
2002年、経営陣はこの失敗を認め、再び富裕層を対象とした高級路線に戻ることを決断します。 低価格商品を値上げし、店舗から喧騒を排除しました。
一時的に売上は落ちましたが、しばらくすると、再び最高級品を望む上流階級の顧客層が戻り始め、高価格帯の商品の売上が伸び始めたのです。
こうしてティファニーは、
- 美しく静かな店舗
- 細やかな心遣いの接客
- 裕福な購買層を魅了する、圧倒的な製品力
という元来のコンセプト(構造)に回帰することで、再び市場での圧倒的な競争優位性を取り戻しました。(※他には、高級車のジャガーも同様に中価格帯へ進出して経営が傾いたことがあります)
大塚家具も、間違いなくこの「失敗の法則」にハマった

大塚家具が今、陥っている赤字地獄は、まさにティファニーがかつて経験した失敗と同じ構造です。
従業員がお客さんに付きっきりで要望をくみ取る丁寧な接客(これこそが高価格の理由)をやめ、「気軽に入れる店づくり」を掲げて中価格帯の家具を並べた。 その瞬間、それまで大塚家具の「特別なおもてなし」を愛していた上顧客たちは、気分を害して去っていきました。
そして、新しく入ってきたのは、「ニトリよりはちょっと良いものが欲しい」という、価格に敏感な層です。しかし、そこには低価格の巨人がひしめき合っており、大塚家具のような中途半端なコスト構造の会社が勝てるはずがありません。
あなたが上顧客だったらどう思いますか? いつも受けていた最高のおもてなしを、突然「気軽さ」の名のもとにカットされたら、二度とその店には行かないですよね。
ロバート・キヨサキの教え。「中価格路線を選ぶやつはバカだ」

『金持ち父さん 貧乏父さん』のロバート・キヨサキ氏は、価格戦略について非常に本質的なことを言っています。
「低価格路線で行くには、低い粗利でも利益を出すための『巨大な仕組み』が必要なので、相当頭が良くないと(資本力がないと)成功できない。ビジネスをやるなら、普通の人(中小企業)でも勝てる『高価格路線』だ!」
そして、こう続けています。
「一方、どっちつかずの『中価格路線』を選ぶやつが、一番バカだ」
辛口ですが、真理です。 低価格(ニトリ)でもない、高価格(昔の大塚家具)でもない。 そんな「中途半端」は誰の心にも響かないし、利益構造もザルのように弱くなるからです。
中小企業こそ「高価格戦略」を選ぶべき、3つのメリット

さあ、あなたのビジネスも、今すぐ中途半端な価格設定をやめて、価格を上げる(高価格・高価値路線)戦略へとシフトしましょう。中小企業にとって、価格を上げることはメリットしかありません。
メリット①:売るのが圧倒的にラクになる
100万円の売上を作るとします。 「1万円の商品を100人に売る」のと、「100万円の商品を1人に売る」の、どちらが簡単だと思いますか? 答えは圧倒的に後者です。毎月毎月、100人の新規客を集め続けるのは、中小企業の資本力と労力では地獄です。
メリット②:お客さんの質が劇的に良くなる
残念ながら、価格とお客さんの質は比例します。 価格が高ければ高いほど、理不尽なクレームを言う「面倒なお客さん」が減り、あなたの価値を理解してくれる「良いお客さん」が増えます。
メリット③:粗利が多くなり、会社に現金が残る
集めるお客さんが少なくて済むので、従業員数も少なくて済み、広告費もコストも減らせます。そして、働く時間も減るのに、手元に残る粗利(現金)は増えるのです。
もう、価格を上げない手はありませんよね。
値上げの恐怖を乗り越える「残酷な計算式」

ここまでメリットを並べても、いざ自分の商品の価格を上げるとなると、すごく怖いですよね。 「価格を2倍にしたら、お客さんが半分になっちゃうかもしれない…」と不安になる気持ちはよくわかります。
でも、少しだけ冷静に計算してみてください。 仮に価格を2倍にして、お客さんが「半分」に減ってしまったとしても、売上はこれまでとまったく同じです。(なのに粗利は増えてます)
売上が同じなのに、対応するお客さんの数は半分で済むわけですから、あなたの労働時間は劇的に減り、サポートの質は上がり、心と時間に圧倒的な余裕が生まれます。
さらに言えば、価格を2倍にして離れていくお客さんというのは、あなたの商品そのものの価値ではなく、「ただ安いから」という理由で来ていた層です。そういった価格に敏感なお客さんほど、少しでも安い競合が現れればすぐにそっちへ行ってしまいますし、クレームも多い傾向にあります。
値上げによってそういった層が離れ、本当にあなたの価値を理解してくれる上顧客だけが残る。これが、ビジネスを安定させるための「正しい構造」なのです。
まとめ:価格を上げるには「価値」を上げろ

【具体例】中小企業がいますぐ付加価値をつける3つの方法
価値を上げるといっても、商品を一から作り直す必要はありません。たとえば、以下のような要素を足すだけで、商品の価値(価格)は跳ね上がります。
- ①スピード(時間)を売る: 通常1ヶ月かかる納品を「特急で3日で仕上げます」と約束する。
- ②労力の代行(Do it for you): 「やり方を教えます」というコンサルではなく、「うちのスタッフが全部代わりに作業します」と丸投げプランにする。
- ③強力な保証(リスクの排除): 「もし成果が出なかったら全額返金し、他社のサービス代金も負担します」と究極のリスクリバーサルをつける。
これらを組み合わせるだけでも、価格を2倍、3倍にすることは十分に可能です。
「じゃあ、明日からパッと価格を2倍にしよう」 ……というのは、ただの暴挙です。それでは誰も買ってくれません。
価格を上げるためには、商品・サービスの「価値」を上げなければなりません。
もし仮に、あなたの商品・サービスを「今の2倍の価格」で売るとしたら、そのためにはどんな「圧倒的な付加価値」を付ければ、お客さんは喜んで(むしろ安いと感じて)買ってくれるでしょうか?
自社のブランドを安売りして自滅する前に、一度じっくりと腰を据えて考えてみてください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
西田貴大
P.S. 本文でもお伝えした通り、ビジネスにおいて一番やってはいけないのは、資本力のない中小企業が、ニトリのような巨人と戦おうとして「魔の中価格戦略」へ逃げることです。
勝つための唯一の道は、商品の「価値」を極限まで高め、それを必要とする適切なターゲットに、適切な「高価格」で売るという、強固なビジネス構造を作ることです。
しかし、自分のビジネスの中にどっぷり浸かっていると、「自社の本当の価値はどこにあるのか?」「2倍の価格にするには、どの構造を直せばいいのか?」を、自分自身で客観的に見つけるのは非常に困難です。
現在、あなたのビジネスの隠れた課題(価値のズレや価格設定の構造ミス)を論理的にあぶり出す『マーケティング・ボトルネック診断』を無料で公開しています。
いくつかの質問に直感で答えていくだけで、あなたが今すぐ対処すべき「本当の課題」と、価値を高めて高価格路線へシフトするための具体的な次の一手が見えてくるはずです。
自社のブランドを安売りして疲弊する経営はもう終わりにして、高価値・高価格で利益がしっかり残り、上顧客に愛される強固なビジネス構造を作っていきましょう。
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