From:西田貴大
先日、僕の住んでいる地域のレンタルショップで、定期的に送られてくる「お客様アンケート」に回答する機会がありました。
僕はかなりのパンクロック好きなので、アンケートが来るたびに「お願いだから、有名なパンクバンドの新譜だけでも入荷してほしい!」と、実名で何度も熱烈な要望を書き続けています。
しかし、待てど暮らせど、いっこうに入荷される気配はありません。
店頭に並ぶのは、回転率の良い今流行りのJ-POPアーティストのCDばかりです。
いち音楽ファンとしては「何度もアンケートに書いているのに!」と少し悲しくなりますが、実はマーケティングの視点(経営側の視点)で見ると、このレンタルショップの対応は100%正しいのです。
なぜなら、僕にとっては有名なバンドの新譜であっても、世間一般のJ-POPと比べれば借りてくれるマニアックな人はせいぜい2〜3人しかおらず、それだけで仕入れてしまうとお店は完全に赤字になってしまうからです。
新商品開発やサービス改善の「顧客アンケート調査」に潜む2つの罠

新商品の開発やサービスの改善を行うとき、「まずはお客さんにアンケートを取ってみよう」と考える経営者は多いです。 しかし、アンケートで集まった「お客さんの声」をそのまま鵜呑みにしてしまうと、ビジネスは思わぬ方向へ迷走し、最悪の場合は大きな赤字を出してしまいます。
アンケート調査を実施する際、絶対に気をつけておかなければならない「2つの罠」について解説します。
罠1:声が大きいだけの「非・優良顧客」に振り回される
ひとつ目の罠は、一部の「声が大きいだけのお客さん」の意見に惑わされてしまうことです。
僕のレンタルショップの例のように、「これが欲しい!」、「ああしてほしい!」と強い要望を出してくる人が、必ずしも「自社に大きな利益をもたらしてくれる優良顧客」であるとは限りません(月に5千円~1万円くらい借りてますが…)。
アンケートに寄せられた強い要望を見て、「お客さんが求めているなら!」とわざわざコストをかけて商品を作ったり、仕入れたりした結果、要望を出した数人しか買ってくれず、在庫の山を抱えてしまう……というのはよくある失敗です。
ビジネスの目的は利益を出すことです。 商品開発やサービスの大きな変更に関わる「声」を聞くのであれば、誰かれ構わず意見を取り入れるのではなく、「何度もリピートしてくれている優良顧客」や「しっかりとお金を払ってくれる層」の声に絞って耳を傾けるという残酷な割り切りが必要です。
罠2:アンケートの残酷な真実「お客さんは本当のニーズ(需要)に無自覚である」
ふたつ目の罠は、そもそも「お客さんはアンケートで平気で嘘をつく」という事実です。
「こんな商品があれば絶対に買います!」というアンケート結果を信じて、いざその商品を開発して販売してみたら、まったく売れなかった……という悲劇が、世界中で星の数ほど繰り返されています。
ある航空会社のリサーチで、この「無自覚な嘘」を証明する非常に有名な事例があります。 お客さんに「飛行機(航空会社)を選ぶ基準は何ですか?」とアンケートをとると、多くの人が「座席の広さ」や「機内食の美味しさ」「サービスの質」といった、それっぽいことを答えます。
しかし、彼らが実際にチケットを選ぶときの「脳波(無意識の反応)」を測定してみると……もっとも脳が強く反応し、最終的な購入の決め手になっていたのは、圧倒的に『価格の安さ』だったのです。
もし航空会社がアンケートの言葉を信じて、座席を広くして価格を上げたらどうなるでしょうか? お客さんはアンケートで「座席が広くて最高だね!」と褒めちぎりながら、平気な顔をして比較サイトで一番安い他社のチケットを買うわけです。
これは、お客さんが悪意を持って騙そうとしているわけではありません。 お客さん自身も、自分が本当に求めているものを分かっていないのです。アンケート用紙に向かったときに出てくる言葉は、あくまで表面的な建前であり、深層心理(本当に財布の紐を開く理由)とはまったく違うことが多いという事実を覚えておいてください。
失敗しないための「正しい顧客リサーチ法」

では、アンケート調査が当てにならないのであれば、僕たちはどうやってお客さんの本当のニーズ(需要)をリサーチすればいいのでしょうか?
大切なのは、以下の2つのアプローチを取り入れることです。
1. アンケートではなく「インタビュー」で深掘りする
紙やWebの簡単なアンケートだけで終わらせるのではなく、実際に優良顧客と1対1で話す機会(インタビュー)を作ってみてください。「なぜそう思ったのか?」「普段どんなことに悩んでいるのか?」と、対話を通じてどんどん質問を深掘りしていくことで、お客さん自身も気づいていなかった「無自覚な嘘」の奥にある本音を引き出すことができます。
2. 作る前に「小さくテスト(プレセール)」をする
お客さんが本当にそれを求めているかどうかを確かめる唯一にして最強の方法は、「実際に売ってみること」です。
「商品が完成していないのにお金をもらうなんて……」と身構える必要はありません。
商品を本格的に作ったり大量に仕入れたりする前に、まずは企画やコンセプトの段階で「こういう商品を作ろうと思うのですが、〇〇円なら事前予約しますか?」と先にオファーを出し、テスト販売を行ってみてください(こういった手法をドライテストと言いマーケティングではよく使われる手法です)。
アンケートの「欲しいです」という言葉は嘘をつきますが、「お客さんが実際にお金を払った」という行動は絶対に嘘をつきません。
まとめ:お客さんの言葉ではなく「行動」を見よう

今回のまとめです。お客さんの声を聴いてリサーチする際は、以下の2点に注意してください。
- 全員の意見に従ってはいけない
声が大きいだけでお金をあまり払わない一部のお客さんに耳を傾けず、優良顧客の意見にフォーカスすること。 - アンケートの言葉を100%信用しない
お客さんは無自覚に嘘をつきます。言葉をそのまま鵜呑みにせず、インタビューでの深掘りや、「実際にテスト販売してみる」ことで本当の需要を確かめること。
お客さんの「声」を聞く姿勢は素晴らしいですが、それ以上に、お客さんが「どう行動したか(実際にお金を払ったか)」をシビアに観察することが、ビジネスを成長させる鍵になります。
ぜひ、自社のリサーチ方法を見直す際の参考にしてみてください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
西田貴大
P.S.
「新商品が売れない」
「お客さんの要望に応えているはずなのに、利益が残らない」
もしあなたが今、そんな状況に陥っているのだとしたら、それは今回のようにお客さんの声を拾う「リサーチの段階」で致命的なズレが起きているサインかもしれません。
マーケティングにおいて、最初のボタン(リサーチとターゲット設定)を掛け違えると、その後の集客やセールスはすべて機能しなくなってしまいます。
自社のビジネスのどこで流れが止まっているのか、小手先のテクニックに走る前に、まずは客観的な視点で自社のマーケティングのボトルネック(せき止められている原因)を特定してみてください。
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